みやぎグリーンウォーカー

第6回 「今があってこその将来」トヨタ自動車東北株式会社

所在地 〒981-3408 黒川郡大和町松坂平5-1-1
電話   022-345-6813
URL   http://www.tm-tohoku.co.jp/
取材日 平成20年3月5日(水)

トヨタ自動車東北株式会社今回私たちはトヨタ自動車東北株式会社へ取材に伺いました。

 「トヨタ」と言えば、誰もが認める日本の大企業です。私は偶然にも取材直前に、3月3日の発売雑誌Fortuneの特集で、「米国で最も尊敬される企業ランキング」に日本企業トップとしてトヨタ自動車が第5位にランクインした、という記事を目にしていたということもあって、私自身ひときわ大きな期待を胸に秘めていました。

 トヨタ自動車東北も独立企業とはいえ、現在のところの実態はトヨタ自動車の子会社にあたる位置で、本社から依頼されたユニットを製造しています。この取材を通じて、そういった実情から「トヨタ」であるがゆえのグリーン購入をめぐる現実が見えてきました。


原材料の「グリーン購入」は難しい

「具体的なグリーン購入といえば事務用品が主でしょうか。」トヨタ自動車東北株式会社の生産部技術員室、室長の片寄さんは言います。
私は製造業におけるグリーン購入といえば、加工を施す鉄や樹脂といった原材料を、入手するにあたってそれにかかるコストを基準とするだけでなく環境への影響なども考慮に入れた上で、購入先を選択しているといったようなお話が聞けるのではないか、と安易に思い込んでいたために、事務用品と聞いて内心意外に思いました。

 しかし、一朝一夕には原材料を変更できない事情があります。 そもそも、トヨタ自動車東北では現在設計の部門も開発の部門もなく、愛知県にある本社から請け負った生産作業を専門として行なっているのだそうです。そしてまた、ここであらゆる部品を組み立てて1台の車を完成させるわけではなく、その後さらに車両工場へ作ったユニットを出荷しています。そのため、設計開発を行い、企業自らがそれに伴ったかたちで原材料を選択し購入するという原材料に対するグリーン購入はトヨタ自動車東北には決定権がなく、現在は本社の技術部門がグリーン購入を考慮して決定した原材料、部品をそのまま購入しているとのことでした。

加えて、原材料を自社だけの都合で変更できない理由は他にもあります。コストや環境といった基準以外にも「現在仕事を依頼している関連企業との関係」もその問題のひとつだと片寄さんは話されました。それはつまり、現時点で原材料を仕入れていただいている関連中小工場の存在も数多くあります。品質やコスト、環境といったさまざまな条件に基づいて資源を調達する際に、安易に仕入先を変更しようとした場合、もしかしたら長年依頼していた既存の中小工場への仕事が打ち切られてしまう可能性が生じてしまうかもしれないのです。そうすると、その中小工場は仕事を失い、トヨタに対する信頼が損なわれてしまうことも十分に考えられます。したがってお聞きした話の中からは、トヨタ自動車東北の企業としての性質と、他の中小企業との関係といった問題などによって、グリーン購入が円滑になされない理由が見えてきました。

ところが、このような制約のもとでも、トヨタ自動車東北は環境貢献の方法を探しています。何もトヨタ自動車東北自らが原材料のグリーン購入を行なわなくとも、トヨタ本社の手によってグリーン購入に十分な検討がなされているのかもしれません。また、中小工場においてもその工場それぞれが同じように環境への意識を持って生産を行っていれば仕事を打ち切られることもないと思います。

その点について実際のところがどうなっているのかはわかりませんでしたが、今最も重要なのは片寄さんいわく「常により良い製品を製造しようとする意識を持ち続けること」なのだそうです。「消費者に製品を購入してもらうには、良い製品を作り出さなければならない。良い製品とは安価で高性能というだけでは現代においては不足していて、時代の流れにも即していなければならない。それが環境への配慮なのです。究極的には最大限の利益と環境への配慮を含めた社会貢献の2つの両立を目指しています。」

多様な環境保全活動

トヨタ自動車東北 環境・CSRレポート2007 グリーン購入だけでなく、広く環境配慮といった観点からトヨタ自動車東北を眺めてみると、実に多様な環境保全活動を行っていらっしゃいました。「トヨタ自動車東北 環境・CSRレポート2007」でも公開されていていますが、身近なところではクールビズ、ウォームビズに始まり休憩時間の消灯などが挙げられます。

  また製造過程で不良品が生じてしまうと、それまでその部品に費やされてきたエネルギーが全て無駄になってしまうことになります。そのエネルギーの無駄を防ぐために、不良品自体の発生を根本的になくしていこうという「ロスゼロ活動」にも取り組んでいます。さらに工場特有な部分では製造過程で排出される焼却廃棄物や有害物質の排出量を、月ごとに設定された目標値を下回るような環境データも残されています。

  しかし、そういったデータに満足することなく「排出の総量が減少しているという点よりも原単位に注目して、1単位あたりでもたらされるエネルギー効率をさらに高めていきたい、それが今後の課題。」ということでした。グラフを見るといくつかの排出量は上る時期も見られます。たしかに原単位での折れ線グラフは緩やかな変化を見せているものが大半でした。その物質が用いられ最大限の効果をもたらせば、出来る限り少ない量でより多くの製造が行えることになります。

  目先で確認できる変化より将来を見据えている意識には、トヨタがブランドだけではないということを証明しているかのようで、なるほどと納得し感心してしまいました。

今があってこその将来

最後に、片寄さんは「いつか、ここに夢のある工場を作りたいと考えています。」と現在のトヨタ自動車東北の敷地全体の地図を見せつつ、その現在の空いたスペースを指で差して「ここに工場を作りたいんです。」と将来のビジョンについて語ってくださいました。「夢のある工場、というのは良い製品を作り出す工場のことです。良い製品というのは環境にもかならず優しいものであるはずなんです。」と言いつつも、まだ建設の予定は白紙。

  ここに工場を建てるには、愛知で現在生産されている製品よりも東北地方で生産されたものが優れている点があることを求められます。そういった提案を愛知の本社に行うには、本社から厚い信頼を得なければなりません。そのためには、結局のところ現段階で本社から請け負っている仕事に対して忠実に責任を果たすことが何よりもの第一歩となります。そういった意識を、ひとりだけでなく従業員全体で共有し将来を見据え、今できることに対して真摯に取り組んでいる企業がトヨタ自動車東北なのです。

【追記】

 2008年4月1日トヨタ自動車東北は、自動車部品を製造する現工場の隣接地に工場を新設し、小型乗用車向け環境対応型の新型エンジンを生産すると発表しました。
トヨタ自動車の伊奈専務は、「関東自動車工業岩手工場やトヨタ自動車東北が造る製品は品質がよい。人材がそろい、東北はものづくりの適地」と話しています。
片寄さんの夢の実現に大きく前進しました!


取材メンバー自己紹介
吉良洋輔

東北大学文学部 行動科学専修二年
九州の大分出身ですが、東北の自然もすぐに好きになりました。環境と社会の関係について興味があります。


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