「エコ座談会 Vol.14」

平成27年に富谷町長として就任、翌年の市制移行にともない初代市長となった若生裕俊氏。さまざまな行政サービス・環境施策を矢継ぎ早に打ち出し、活況ぶりをアピールする富谷市がめざす方向とは? 「待機児童ゼロ宣言」の発表を間近に控えた市長にお話を伺いました。

●富谷市について

猪股
対談の様子平成28年10月10日に富谷市が誕生しましたが、富谷は合併をおこなわず村から町、町から市へと発展を遂げています。宮城県内でも過疎化が進む地域が多いなか、富谷市は57年連続で人口増加を続けていますが、その背景についてどのようにお考えですか? また、人を集める魅力はどこにあるのでしょうか。

若生
近年、仙台北部中核工業団地にトヨタ自動車がやってきて、大和リサーチパークなどが整備された結果、人の流れが大きく変わりました。これまで勤め先は仙台市中心部がほとんどで、仙台駅周辺への行き来が多かったのですが、仙台近郊で勤めることができるようになったのも、人口増加の一因であると言えます。県内で富谷市の人口はまだ10番めですが、人口増加率では大和町についで2番目になります。

●地域連携・低炭素水素事業について

猪股
実証事業ポスター富谷市のタウン構想についてお聞かせください。富谷市は、日立・丸紅・みやぎ生協と共同で環境省「平成29年度地域連携・低炭素水素技術実証事業」に採択されましたね。
若生
現在実証事業の稼働に向けて準備を進めているところですが、実は、環境省から採択を受けるまでかなり苦労しました。私は仙台市地球温暖化対策推進協議会にかかわっていたこともあって、もっと二酸化炭素(CO2)の削減を推進したい、富谷市ならではの施策を考えていました。再生可能エネルギーや排熱利用を含め、さまざまな選択肢を検討したなかで、水素先進都市をめざしてはどうか? そこから環境省の地域連携・低炭素技術実証事業へ応募することになりました。まず平成28年にわれわれと日立・丸紅で応募したところ落選、しかし採択自治体がゼロということで、翌年にみやぎ生協にも加わっていただいて再チャレンジ。みごと全国で6例目、東北では初めての採択となり、3年間の予算全額を環境省が負担する実証事業となっています。 実証事業の概要としては、本市にあります「みやぎ生協・コープ富谷共同物流センター」の太陽光発電システムで発電した電力を水電解装置によって水素を製造・貯蔵し、水素を特殊な合金に吸着させて生協の既存物流網を活用して輸送し、市内の住宅や店舗、市の児童クラブに水素を運び、その水素をエネルギー源として熱や電気に利活用するという社会実証をおこなうもので、8月ごろの本格稼動を予定しています。また、あわせて、市民向けのシンポジウムの開催や水素エネルギーを活用した環境教育にも取り組みたいと考えています。

●スローフードについて

猪股
屋上の巣箱(提供:富谷市)若生市長は、以前からスローフードを提唱してきましたが「とみやはちみつプロジェクト」は、その流れで始めたものでしょうか。自然農法のカギとなるミツバチの育成から着手している点など興味深いお話です。その事業内容やスイーツにまつわる取り組みについてお聞かせください。
若生
現在、市役所の本庁舎屋上に巣箱を置いて、市民のみなさまがボランティアで一生懸命お世話をしています。去年(平成29年)の冬には初めての越冬にも成功しています。
山岡
養蜂のクラブがあるそうですね。
若生
そうです。「とみやはちみつプロジェクト」のメンバーを募集したところ、なんと20人以上の応募がありました。当初は地元NPOと応募メンバーで手探りのスタートでしたが、お世話しているうちに愛着が湧くようで「市長さん、ミツバチに会えなくて寂しい」と言われることもしばしば。お世話のさい、夏は暑くて大変なのですが、冬の冬眠時には会えなくなってしまい寂しいようですね。私がなぜミツバチを始めたかというと、やはり「食」なのです。市民の方々に参加してもらいながら市役所の屋上でミツバチを飼って、蜜源づくりが広がっています。ミツバチは環境指標生物ですから、これが軌道に乗れば「富谷はミツバチが住めるほどの好環境」という証明にもなると考えています。
猪股
先日、はちみつに関するセミナーで、薬学系大学の先生がインフルエンザウイルスに対する蜂蜜の抗菌性を学生に調べさせたら、いま話題のマヌカ蜂蜜ばかりでなく数種の蜂蜜に正の効果があり、しかもその程度は蜜源によって大きな違いがあることがわかったそうです。また、ミツバチはものすごく農薬に弱い生き物なので、もとになる植物が健康的に育ち、養蜂がうまくいき、上質な蜜源を得ることができれば、市長がお話のとおり富谷の自然環境が優れている証明にもなります。
若生
以前、農薬の影響で世界中のミツバチがいなくなったと騒がれましたが、そのとき私はスローフードインターナショナルで執行役員をやっていて、大きなテーマになりました。ミツバチ不在時の世界の食に危機感を抱いたわけです。その対策としてまずは、ネオニコチノイド系の農薬を規制しなくてはならない。海外では欧州を中心に規制が進んでいますが、残念ながら日本では手つかず状態です。そこで富谷ではJAあさひなに対して、同系の農薬使用を控えてもらうよう働きかけ、ゴルフ場などにも協力を訴えながら、状況を変えようと考えています。ミツバチひとつですが、「とみやはちみつプロジェクト」のよい効果がいろいろなところに波及しています。
猪股
ミツバチの環境に対するデリケートさが、よいバロメーターになっていますね。
若生
役所の屋上にミツバチの巣箱を置いているのは全国で富谷市だけです。びん詰め蜂蜜は出張先への手土産に大変喜ばれております。
山岡
食への関心は、人を引きこむ力が大きいということでしょうか(笑)。そして、富谷には「お茶の北限」といわれる富谷茶があるそうですが。
若生
とみや茶復活プロジェクトのパンフ(提供:富谷市)
はい。もともと奥道中歌で「国分の町よりここへ 七北田よ 富谷茶のんで 味は吉岡」とうたわれるほどの産地でした。そこで富谷茶の復活を「富谷宿」開宿400年(1620年、伊達政宗公の命により開宿)に合わせて計画しています。お茶は飲んでよし、スイーツにもよしと、幅広く利用できますからね。富谷茶は野生化したものを集め、シルバー人材センターの協力を得ながら栽培していますが、これは高齢者の就労機会の確保という意味で国から補助金も出ています。
山岡
一石二鳥ですね。お茶はどのようにして富谷へ入ってきたのでしょうか。
若生
伊達政宗公が宇治から苗木を取り寄せ、お茶の栽培を推奨しました。ここの気候が栽培に適していたのか、土壌がマッチしたのか、栽培地として拡大し歌にまで詠まれるようになったのです。
山岡
朝霧が発生しない場所ではおいしいお茶が育たないと聞きますが、北上川下流域の桃生茶と同様、ここでも栽培の好条件が揃っていたのでしょうね。
若生
しかし富谷茶の場合、栽培者がいなくなって生産が途絶えたようです。お茶そのものは野生化が進んで、群生しているところをよく見かけます。
猪股
残ったということは、それだけサバイバル能力が高いということ。うまく育てていけば収量も増えそうですね。
若生
幸運にも在来種が残っていたので、それを大事にあつかいながら生産を軌道にのせたいと考えています。
山岡
平成29年秋におこなわれた、とみや国際スイーツ博覧会の様子(提供:富谷市)
さらに富谷市の話題が増えますね。
若生
今後、品質管理のうえ茶葉として本格的に商品化しますし、スイーツにも活用していきます。
猪股
緑茶に含まれるカテキンが注目をされるなか、さらには、蜂蜜も使えると相乗効果ですね。農作物の受粉におけるミツバチの役割も大きく注目されています。
若生
日本の農政は大転換をはかり、突如「減反政策」を廃止して直接支払交付金を打ち切りました。そこで富谷市ではみつ源づくりのための観賞用作物を推奨し、それを補助、菜の花やレンゲ、ヒマワリなども対象にしています。花は栽培にあまり手がかからないですからね。これを伸ばしていけば、やがて富谷はスイーツ素材の産地になると確信します。
山岡
これらを実行に移して、着実に街づくりへ反映させているのはすごい。若いころの若生市長を存じ上げておりますが、20年もまえから夢の実現に向けて活動してこられた結果ですね。わが国すべての地方自治体が、この富谷市を参考に街づくりを進めたならば、人口減少は増加に転じることまちがいなし、持続可能な社会が実現しますね。 (後編につづく)

富谷市役所
宮城県富谷市富谷坂松田30番地
電話 022-358-3111(代)
URL http://www.tomiya-city.miyagi.jp/
対談日:平成30年3月20日(火)

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